poweed by MIC-KEY

患者さまとご家族の声
Family’s VOICE

Interview04
『お母さんの声』
在宅介護:関口有佳さんの母、関口まさ子さん

一人ひとりに合った
胃ろう食のオーダーメイド

  • 関口まさ子さん 関口まさ子さん
  • 有佳は、生まれた直後からミルクを飲み込むことができず、経鼻栄養をしていましたが、20歳の時に胃ろうの手術を受けました。胃ろうから食べ物を入れることができるということを教えてもらったので、それが魅力だったのです。なぜならこの子は、ご飯を食べたことがなかったので。ちょっと舐めさせたりしたこともありましたが、唾液でむせてしまいます。せっかくなら、ご飯やおかずといった普通の食事を経験させてあげたいとずっと思っていましたから、胃ろう手術の説明を受けた時は、何も躊躇しませんでした。

  • ところが術後の合併症を生じてしまい、胃ろうが使えない状況となり、最終的には胃ろうをあきらめなければならなくなりました。そしてまた経鼻チューブの生活に戻りましたが、普通の食事を胃から入れてあげたいという願いが叶わなくなってしまったことに、とても落胆した毎日を過ごしていました。
    2年半ほど前、水のような下痢が止まらなくなりました。薬をもらってもなかなか良くならず、悩んで悩んで長い月日がたちました。苦しみのなか知人に勧められて、つばさ静岡を受診したところ、経鼻チューブからでも食事が入れられる方法を教えてもらうことができたのです。

  • 関口まさ子さん
    ▲関口有佳さんの母、政子さん

    酵素剤を入れて食事をミキサーにかけると食事が液体状になり、細い管からも注入できるような液体状の食事ができ上がります。その液体状の食事と豆乳、野菜ジュースなどを注入してみたところ、その晩から便が固まりました。全く奇跡のようでした。この液体状の食事を毎日取り入れたことで、注入の回数も減らすことができました。夜の注入がなくなったおかげで、親子とも夜はゆっくり眠ることができるようになったんです。

    今も、普通に家族が食べているものと同じものをミキサーにかけて、鼻からチューブに入れてあげていますが、こんなにも違うのかとびっくりです。下痢はほとんどなくなり、見違えるほど肌つやが良くなり、表情も出てきて、今はミキサーの音に反応するのです。「あ、ご飯だ」というかのように、嬉しそうな顔をします。

  • 関口まさ子さん
    ▲関口政子さんと有佳さん

    私は料理が好きなので、この子にも作って食べさせてあげたかったので、それが叶って今はとても楽しい毎日です。
    今では、一緒に買い物にも連れて行きます。「今日は何にする?」と話しかけると、反応しています。先週はおでんを買いました。金曜日にはデイケアの施設に来る移動パン屋さんで、必ずお総菜パンを買います。自分で買ったものを夕飯で食べるのです。「今日のご飯、私が買ってきたのよ」と誇らしげな表情をします。20歳の誕生日にはビールも入れましたし、昨年はワインもあげました。少しですが、大人の証です。
    病院や通っている施設でも経鼻から入れることのできる食事を自慢しています。何人もの職員さんや看護師さんが興味深々で見に来てくださるので、実際に作ってみせて、細い管から注入して見せると歓声をあげてくれます。これからも私は、どこに行っても「この子は鼻からご飯食べてます」と大きな声で話していくと思います。

    関口まさ子さん
    ▲有佳さんのアルバム

浅野先生のコメント

浅野 一恵 先生

経鼻チューブから液体栄養剤を注入している方にも食事を楽しんでほしいと考えていたところ、酵素剤を使って食事を液体にする方法を栄養士・調理師さんが見つけてくれました。それ以来施設でも経鼻栄養の方にも、食事が提供できるようになりました。
胃ろうにすることにまだ決心がつかないとか、病状により胃ろうを作れない人にも、この方法であれば食事を入れてあげることができます。胃ろう食や液状食の良いところは、オーダーメイドの栄養剤であり、かつおいしいこと。いくら成分が良い栄養剤でも、1つの製剤で全員の体質に合わせることはできません。しかし食事であれば、その時々の体調にあわせて調整してあげることができます。そしておいしいということは、とても大切です。腸内シグナルが活発に刺激され、各種ホルモンが分泌され、消化吸収だけでなく、精神面においても良い効果をもたらすことが最近の研究で明らかになってきています。