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患者さまとご家族の声
Family’s VOICE

Interview02
『お母さんの声』
通所・下釜光さんの母、下釜櫻子さん

食事を口だけではなく、
胃で味わい、食べる幸せ

  • 下釜櫻子さん 下釜櫻子さん
  • 難産の後遺症で脳性まひとなった光は、小さい頃から経口摂取に問題がありました。それまでなんとか口から工夫して食べてきましたが、16歳ごろから胃食道逆流症による肺炎を繰り返し、もう打つ手がないと言われるほど衰弱してしまいました。23歳のころ、信頼していた医師からの勧めがあり、思い切って胃ろうの手術を受けました。液体の注入で逆流が悪化し一時呼吸がとても不安定になりましたが、半固形栄養剤を導入してもらったところ、逆流が軽減し体調が戻ってきました。

  • そして胃ろう造設から半年後、体調が安定した時に胃ろうから入れることのできる「胃ろう食」の存在をつばさ静岡で教えてもらいました。胃ろう食を始めてみたところ、信じられないくらいの大きな変化がありました。排便が良くなり、肌ツヤが良くなったことに加えて、表情がとても豊かになったのです。胃ろう食をみるとニコッと笑い、注入するととても満足げな顔をします。食事は口からだけでなくてもいいんだ、ということがよくわかりました。この子は胃で味わい、ご飯を食べているんです。胃から食べることを楽しんで、「おいしいよ」と喜んでいることが良く分かります。胃ろうを造設するまではいろいろ悩みましたが、その姿を見て胃ろうにしてよかったと思えるようになりました。

  • 下釜櫻子さん
    ▲下釜 櫻子さん(母)と下釜 光さん(息子)

    今では胃ろう食を注入すると、指をしゃぶるようになりました。生まれてから大人になるまで指をしゃぶることができなかったのに、それができるようになったのは本当に驚きです。ミキサーを回す音に反応して喜び、自分でミキサーのスイッチを押せるようにもなりました。こうして胃からの食事とともに、光が一歩一歩成長しているのがとてもうれしいです。

  • 胃ろう食のいいところは、わが子に食べさせてあげたいものをすべて胃ろう食にしてあげられることです。唐揚げや肉じゃが、牡蠣の揚げだし、鰻の蒲焼、ケーキ、玄米など何でも胃ろう食に加工することができるんです。光と一緒に家族全員が健康で幸せになるようにと願って、体に良いものは何か、免疫がつくような献立は何か、など考えながら食事を用意する時間はとても幸せです。

  • 下釜櫻子さん
    ▲クッキング教室で習った料理のお写真

    最近特に気付くのは、胃ろう食との出会いによって、食べるのが苦痛だった光に再び生きる気力がみなぎってきたということです。声の出し方、手の動かし方で自分の気持ちを伝えようとしているのがよく分かります。私や施設の調理師さんが食事に込める愛情を受け取って、体力、気力が充実してきたのだと感じています。

    下釜櫻子さん
    ▲クッキング教室で習った料理のお写真

浅野先生のコメント

浅野 一恵 先生

障がい児・者は、しばしば胃食道逆流症が問題になります。明らかに吐かなくても消化管出血を繰り返したり、胃液の食道への逆流で慢性的にゼロゼロと喘鳴を起こすこともあります。胃酸の逆流で唾液の分泌が増え、誤嚥により発熱や肺炎の原因ともなります。胃ろう食はそれらを防ぐことができるのです。