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胃ろうの管理
After CARE

トラブルの原因と対策Causes and Remedies

  1. 1.瘻孔部潰瘍
    キットの圧迫
    キットの圧迫
    フィーディングチューブの圧迫による潰瘍
    フィーディングチューブの圧迫による潰瘍
  2. 2.瘻孔部びらん
    瘻孔部びらん

    外部ストッパーによる圧迫やカテーテルが常に同じ方向に固定されている場合などには皮膚にびらんや潰瘍を形成しやすくなります。圧迫による機械的刺激と血流障害によるものなのでボタンタイプではシャフト長の長いものを選択し、チューブ型では外部ストッパーを圧迫のかからない位置にずらします。またカテーテルが同じ部位を圧迫しないように定期的に位置を変えることが大切です。外部ストッパーと皮膚の間には十分な余裕を持たせるとよいでしょう。

  3. 3.肉芽腫(不良肉芽)
    肉芽腫(不良肉芽)

    カテーテルによる慢性の刺激によって瘻孔周囲に肉芽(赤い隆起)ができることがあります。出血や痛みがない場合には放置していても問題ありません。患者さんが気になったり、出血や痛みを伴う場合には治療をします。ステロイド軟膏を使ったり、外科的切除を行います。主治医の先生と相談しましょう。治療を行った後も予防が大切ですので、カテーテルを垂直に立てたり同じ方向に倒さないことや毎日のスキンケアを行いましょう。

  4. 4.瘻孔周囲炎、皮下膿瘍
    瘻孔周囲炎、皮下膿瘍

    瘻孔周囲に発赤、疼痛などの炎症所見が出た場合には瘻孔周囲炎を疑います。原因として細菌による感染、ストッパーの過度の締め付けによる血流障害などがあげられます。進行すると皮膚の下に膿瘍を形成します。糖尿病など免疫機能が低下している患者さんでは重症化しやすいので早期に対処しなければいけません。抗菌薬の投与や切開などが必要になるので主治医の先生と相談しましょう。

  5. 5.バンパー埋没症候群
    内部バンパーが胃壁内に埋もれている
    内部バンパーが胃壁内に埋もれている状態

    過度の圧迫がかかることから胃の中にあるバンパー(胃内部ストッパー)が胃壁内に埋もれてしまうことを言います。栄養剤の注入時に抵抗を感じたり、まったく注入することができなくなります。予防するためにはカテーテルが抵抗なく動くか、皮膚と外部ストッパーとの間に余裕があるかを定期的に見ておくことが大切となります。また必要量以上のエネルギーを長期に投与することで皮下脂肪がつき相対的に余裕がなくなり、過度の圧迫をもたらすこともあるため体重など栄養状態の定期的な評価をおこなうことも重要です。

    内部バンパーが胃壁内に埋もれている
    内部バンパーが胃壁内に埋もれている

    【POINT】

    • 瘻孔完成後にバンパーが胃壁の中に埋もれてしまいます。栄養剤の洩れ、滴下不良等で気付くことが多くあります。
    • 内視鏡で確認し、バンパーを回収できればスネアで回収します。バンパーが完全に胃壁に被われてしまったら外科的に回収します。
  6. 6.キットサイズ不適合
    皮膚の中に外部ストッパーが食い込んでいる
    皮膚の中に外部ストッパーが食い込んでいる

    キットのサイズが合っていないと皮膚に食い込んだりします。余裕のあるものに交換しましょう。

  7. 7.胃内潰瘍
    尿道カテーテルによる対側の胃粘膜潰瘍形成
    尿道カテーテルによる対側の胃粘膜潰瘍形成
    先端が対側の胃粘膜を損傷
    先端が対側の胃粘膜を損傷
  8. 8.下痢

    下痢の原因にはいろいろあります。
    おおまかにわけると、

    1. 栄養剤によるもの
    2. 患者さんの状態によるもの
    3. 薬剤によるもの

    があげられます。


    1. 栄養剤によるもの

      • ●浸透圧が高い栄養剤を使用している
        →浸透圧の低い栄養剤に変更します。
      • ●栄養剤の温度
        →冷たいまま投与すると下痢を起こしやすいので常温のまま投与します。
      • ●栄養剤の細菌感染
        →栄養剤や注入用器などの細菌感染によって下痢がおこるため、清潔に取り扱うことを心がけ、栄養剤は8時間以内に投与します。注入用器などは使用後にミルトンなどにつけおき洗浄した後十分に乾燥させます。
      • ●液体栄養剤によるもの
        →栄養剤が液体であることによる下痢の場合には投与速度を遅くする、食物繊維を入れるなどの対応を行います。栄養剤の半固形化も効果的であると言われています。
    2. 患者さんの状態によるもの

      • ●絶食期間が長い
        →絶食期間が長いと腸粘膜が委縮しているため少量からゆっくりと投与することが必要です。
      • ●感染性腸炎
        →ノロウイルスなどの感染性腸炎が起きていないか、便の性状、発熱の有無などについて観察します。必要ならば絶食、抗菌薬の投与を行います。
      • ●乳糖不耐症
        →栄養剤には乳糖が含まれていることが多いので、乳糖不耐症の場合には乳糖を含まない栄養剤に変更します。
    3. 薬剤によるもの

      →下剤や制酸剤、抗菌薬など下痢の原因になる薬剤を投与されていないかをチェックします。
  9. 9.嘔吐(胃食道逆流)

    胃内容物が食道へと逆流する状態を言います。症状としては嘔吐や、誤嚥性肺炎などがあります。原因として食道裂孔ヘルニアなどがあげられます。対応としては①チューブの先を十二指腸に留置する、②栄養剤の半固形化、③投与速度を遅くする、④投与時の体位を90 度までアップするなどがあります。患者さんの状態に応じて主治医の先生と相談して選択しましょう。

     

  10. 10.瘻孔漏れ

    漏れがひどいと周囲の皮膚に皮膚炎を生じ、びらんや潰瘍を作ってしまいます。また、においのために患者さんが不快に感じたり、頻回の着衣やおむつの交換が介護者の負担になります。漏れの原因にはいくつかあります。

    1. 瘻孔の広がり

      瘻孔が広がっている場合にはカテーテルの脇から漏れます。原因としてストッパーによる締め付けのために血流障害を生じ圧迫壊死を起こすことがあげられます。腹壁との間に余裕をもたせた状態で垂直に立てましょう。あまりに漏れがひどい場合にはカテーテルのサイズをあげるのではなく一旦抜いて瘻孔が自然に縮小するのを待った方が良い場合があります。
    2. 胃内圧の上昇

      胃運動低下や便秘などがあると胃内圧が上昇し結果として栄養剤の漏れとなることがあります。腹部所見や排便状況を確認するとともに、栄養剤投与前に胃内容物を吸引し胃内に大量に栄養剤が残っていないかを確認しましょう。
    3. 液体栄養剤によるもの

      液体栄養剤の場合に漏れが起こりやすいと言われています。この場合には栄養剤の半固形化により漏れが改善されることがあります。
  11. 11.BVS(ball valve syndrome)バルーンによる十二指腸閉塞
    尿道カテーテルによる対側の胃粘膜潰瘍形成
    ボールバブルシンドローム
    バルーンが胃の動きによって運ばれ十二指腸をふさいでしまうことがあります。こまめに長さ(チューブの目盛り)を確認するようにしましょう。
    尿道カテーテルによる対側の胃粘膜潰瘍形成

    バルーン・チューブ型の場合にはバルーンが胃の蠕動によって十二指腸に運ばれてしまうことがあります。その場合には栄養剤が入らなくなったり、急速な栄養剤の小腸内への投与によりダンピング症状を起こします。予防するためには外部ストッパーの位置をマジックなどで印をつけておき、その場所がずれていないかを定期的に確認します。

    【MEMO】栄養剤の半固形化
    最近栄養剤の半固形化が広く普及してきています。以前は液状の栄養剤をそのまま投与していましたが、液状であるために瘻孔からの漏れ、胃食道逆流、下痢などが起こりやすい面もありました。半固形化した栄養剤を投与することでこれらの合併症が起こりにくくなるだけでなく、投与に要する時間が短縮するため患者さんのリハビリテーションの時間を確保することができ、また介護者の負担軽減の効果も得られます。半固形化にはいくつかの方法がありますので、適応を含めて主治医の先生や栄養士と相談しましょう。