胃ろうの管理
After CARE
長期の管理Long-term Management
【目標】
良好な瘻孔の保持とスキントラブルの予防、さらに強固な瘻孔を形成するためにはさらに1ヵ月程度かかるとされます。正常皮膚面は清潔にし、スキンケアを十分行って管理しましょう。
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1.瘻孔のスキンケア
最低1日に1回は洗浄剤と微温湯を用いて瘻孔部の汚れを洗い流すか、ふき取ります。
【POINT】
- 石鹸成分や洗浄成分が皮膚に残るとスキントラブルの原因にもなるので、泡状の洗浄剤を用いるか、石鹸は良く泡立ててから使用すると洗い流し易いでしょう。
- 瘻孔トラブル(感染など)が無ければ術後1週間程度から入浴できます。
- 入浴の際、湯船に入っても湯が胃内に大量に入り込む事はありません。
- 入浴、洗浄の後は基本的に自然乾燥で良いでしょう(ドレッシングやガーゼ保護の必要はありません)。
- 特に指示の無い場合は、軟膏等の塗布は避けましょう。
- 正常皮膚面の消毒は必要ありません。常在菌まで消毒してしまい、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。
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2.カテーテルの管理
栄養注入の前後と、薬剤投与後にはチューブの閉塞予防のため微温湯で十分なフラッシングをしましょう。
薬剤投与の方法には錠剤などを粉砕して投与する方法(粉砕法)と薬剤をそのまま温湯に溶解して投与する方法(簡易縣濁法)とがあります。粉砕法では粉砕する手間や時間がかかる他に薬剤の安定性や徐放性が得られないなどの問題点があります。簡易縣濁法ではこれらの問題点を解決することができます。
ただすべての薬剤に簡易縣濁法が適用できるわけではないのでそれぞれの薬剤について調べることが必要となります。適さない薬剤があれば他の薬剤に変更しなければいけないこともあります。初めて簡易縣濁法を行う場合には薬剤師に相談しましょう。【POINT】
- 薬剤の閉塞予防には簡易縣濁法を利用します。
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3.カテーテルの清潔な管理
カテーテルは清潔に保つことが必要です。そのためには栄養剤や薬剤の注入後に十分な量の微温湯で勢いよくフラッシュすることが必要です。
チューブ型胃瘻チューブの場合にはフラッシュ後に10%酢水をカテーテル内に充填しておくことで汚染予防と静菌効果が期待されます。これは汚れてから行うのではなく使用開始時から行うことが大切です。- 半固形化栄養法を行っている場合には微温湯によるフラッシュだけでは栄養剤が残留することもあるのでその場合には水分も半固形化してフラッシュするときれいに保つことができます。
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4.カテーテルの交換
カテーテルは定期的な交換が必要となります。バンパー型とバルーン型とでは交換時期や交換のし易さが違います。
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●バンパー型
保険診療上は4ヵ月経過すれば交換が可能です。カテーテルの状況によって6ヵ月から1 年の間で交換します。長期に使用することによってバンパー部分が劣化してちぎれてしまうことがあるので注意が必要です。またバンパー型の交換ではバンパー部分を変形して抜去したり押し入れるため、痛みや出血が伴います。痛みが強い場合や出血傾向がある場合にはバルーン型への変更を考えましょう。 -
●バルーン型
保険診療上は24時間経過すれば交換可能です。多くの施設では1ヵ月程度で交換しています。交換は容易で、交換に伴う痛みや出血が多くはありません。
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●バンパー型
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5.交換方法
カテーテルの交換は慎重に行わなければいけません。瘻孔破損や腹腔内誤挿入が起きると重大な結果を招きます。そのためにはできればガイドワイヤーを用いて瘻孔の長さや方向性を確認して抜去や挿入を行うことが良いと思います。また適正なサイズのものを選ぶことも重要です。
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●バンパー型
バンパー型ではバンパーを十分に変形させてできるだけスムーズに瘻孔を通過させなければなりません。キットによって変形の方法などが違うために十分に確認して行うことが大切です。また強い力で抜いたり押し込んだりするので、瘻孔を破損したり胃粘膜を傷つけたりすることもあるので注意が必要です。 -
●バルーン型
バルーン型は製品によって固定水量が違うので確認しておきましょう。また水が抜けにくい時にはカテーテルをもみしごくことによって流れがよくなります。挿入前にはバルーンを一度ふくらませて水の抜けなどがないことを確認します。交換後固定水を入れる時には外部ストッパーを腹壁に押し付けておき、胃内でバルーンがふくらむようにしましょう。
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●バンパー型
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6.カテーテル交換の確認方法
交換後はカテーテルがきちんと胃内に挿入されていることを確認しないと栄養剤を注入できません。胃ろうカテーテル交換法(200点)においては留意事項として以下のことがあげられています。
【留意事項】
胃ろうカテーテル交換法は、十分に安全管理に留意し、胃ろうカテーテル交換後の確認を画像診断または、内視鏡等を用いて行った場合に限り算定します。なお、その際行われる画像診断及び内視鏡等の費用は、当該点数の算定日に限り、1回に限り算定します。つまり交換後内視鏡や透視などの画像診断を行なわなければ算定できないとされています。
ただ在宅や介護施設では画像診断が難しいため医師の責任のもとにさまざまな方法で確認されています。確認方法として1. 内視鏡(経瘻孔的細径内視鏡含む)2.造影(X線透視、造影剤注入後撮影)3.交換前に胃内に着色された水を注入し交換後吸引する(お茶、栄養剤、インジゴカルミン)4. 胃液吸引(試薬や試験紙などで胃酸の確認)などがあげられます。インジゴカルミンを用いる方法としてはスカイブルー法があります。
【例】インジゴカルミン1A を蒸留水500mLに溶解し、胃内に約100mL注入して、カテーテル交換後、減圧チューブから胃内容物を吸引します。30mL以上吸引できた場合、および自然排液があった場合は胃内留置(+)と判断し、それ以外は胃内留置ができていない可能性があると判断します。 どのような方法を用いた場合でも確実に胃内に挿入されていることが確信できない場合には画像上できちんと確認しなければなりません。